果てしない平原に突き出た無数の茶色い突起物。その上空を雄大に飛ぶ色とりどりの気球。こんな景色が世界にはあるのかと心躍ったのは何年前のことだろう。ミャンマーよりもバガンという名は頭に鮮明に残ったのを覚えている。
それから数年後、東南アジアラウンドで上海→香港→ベトナム→ラオス→タイ、そしてミャンマーへ入った。バガンはその大きな目的の1つであり楽しみにしていたが現実はヤンゴンで交通渋滞で深夜バスを一本逃し、雨は降るわで幸先はあまり良くなかった。
しかしさすがはVIPバス!3列シート(珍しく)のコンセント付き。ペットボトルの水とブランケットが備わっていてかなり快適に寝ることができた。
朝5時バガンに到着しえげつないサンライズはまるで歓迎されているかのようだった。バガンのバスターミナルに着くと、タクシーのキャッチが襲いかかってくるのでこっちも負けじ値段交渉。
そんなこんなで向こうの言い値の半額でタクシーに乗り遺跡の入域料25000チャット(1800円)を検問で支払いバガン旅スタート。これは全員が払うらしくレシートには5日間有効とのこと。これを払うのでバガンの遺跡1つ1つに入場料を取られることは例外を除きない。
泊まったのはロイヤルバガンホテル。いつもの安さ全開のバックパッカーとは違い普通のホテルに併設するドミトリーといったところ。朝食もブッフェでプール付き一泊1000円。たまには少し払って贅沢するのもよい(1000円超えたら豪華)
移動は全てこのe-bike。半日レンタルで1000円かからない。バガンと総称しているが実際は広大でニャウンユー(Nyaug-U)とオールドバガン、ニューバガンの3エリアで構成されその街をつなぐ道路がかなり長いので自転車よりバイクの方が絶対よい。バイクと言っても電動なのでスピードもそこまで出ないので安全、ツアーを頼むより自分のタイミングで地図を広げながら思い思いのところに行く方がずっと楽しいはずだ。
バガンの攻略法
①ホステルでe-bike(電動バイク)を借りる。
②パゴダ内は原則、裸足になるのでアジアの寺院とは違いサンダル移動がよい。
③ある程度行きたい寺院をエリアで絞ってからまわった方が楽。周りながら夕日スポットも決めよう。
Ananda Temple
ニャウンユーからオールドバガンに入るとまずこのアナンダ寺院に目がいく。バガンのパゴダ、寺院の中でも屈指の建築と彫刻美を誇り、仏塔の下には4体の巨大な仏像が鎮座し圧倒される。床がきれいに拭かれているなのもありがたい。
敷地が広くかすかに響く鈴の音が心地よい。人が少ない朝に行くことをおすすめする。ここはとにかくチルスポットです。
Thatbyinnyu Phaya
もっとも大きなパゴダの1つ。オールドバガンの王宮エリアにあり1144年建立。残念ながら登るとことは出来ず、仏像と対面しながら一周。
夜はライトアップとてもフォトジェニックだが中へは入れない。
Bu Paya
オールドバガンの代表的なパゴダ。イラワジ川沿いにありここからサンセットクルーズ(ボート)が出るため観光スポットに。そのためたくさんのローカルがここでボートツアーの誘致をしようと待機している。何を言っているかわからない謎の音楽が大音量で流れる中、黙々とこの金の仏塔に祈ってる人たちも混ざりカオスに。雰囲気的にあまりゆっくりはできないかも。
イラワジ川と簡素なサンセットボートの船着場。夕日を見るにはどこがいいかしか頭にないので初日はロケハン感覚。自分の旅の傾向として観光客、特にツアー客がいないところを常に探しているのでここはなし。
Dhammayazaka Pagoda
ニューバガンから離れ観光客も気持ち減りゆっくりとした空気が流れる。花が咲いてると金の仏塔はより映える気がする。バイクで帰ろうと思った矢先、ここで一人の青年に会った。
彼は英語で夕陽スポットを探してる?と聞いてきた。そうだと答えると彼は続けてこの辺りのパゴダは全て登れないから俺らしか知らないシークレット登れるパゴダを教えてあげると。そんなうまい話があるかと思いつつもおもしろうなのでまだ夕陽スポットが決まらなかったのでついてくことにした。
悪路をどんどん進んでいく彼のバイクはガソリン式の普通のなので自分のとよりずっと速いのだ。
約10分悪路を超え進んだ先にある1つのパゴダ。裸足になり登ってみる。正直そこまで高くない…思ってたのとちょっと違うが彼はしきりにノービデオ、ノーGPSと言ってくる。
なぜ登れるパゴダが少ないかと言うと2016年8月に起きたM6.8の大地震でバガンの遺跡は被害を受け数多くの仏塔が損壊した。かつパゴダに登った人が落ちて亡くなる事故が起きた事も影響している。去り際に彼は自分で砂を絵を描いているといいバックからおもむろにサンドアートを数十枚見せてきた。一枚約3000円、二枚買うと5000円に値引きできるという。そうきたか…ため息と共にそう思うしかなかった。値段設定がまた微妙なラインで決して高くはないかもしれないがバックパッカーにとって安くはない。断りをいれバイクに乗ったが彼の残念そうな顔が頭から離れない。東南アジアあるあるだ、そう自分に言い聞かせるしかなかった。
一走りして気持ちを切り替えたら Date cafe で休憩。ニャウンユーにあるカフェでバガンで1番美味しいコーヒーが飲めるお店。モーニングメニューをお昼過ぎても注文できる優しさ。淹れたてのハンドドリップは癒しのひとときになること間違いなし。個人的にはアメリカのようなカリッカリのベーコンが好きすぎる。ここで会った1人の日本人は地球の歩き方をコピーしてノートにまとめていた。各パゴダの概要や知識、歴史を読んでおくと差異がわかっておもしろいと思う。
ニャウンユーには他にホテルはもちろん、レストランやマッサージ、お土産、顔に塗るタナカ体験などバガンで数少ない娯楽エリアだ。
どうも日中バイクになりながらまわるパゴダ、寺院ツアーはタイのアユタヤ遺跡を彷彿とさせた。それが色なのか天候なのかはわからない。私が言ったのは9月中旬でミャンマーは雨季ど真ん中。ヤンゴンではたびたび雨に泣いたが、バガンは打って変わって晴天が続いた。バガンは年間を通じても雨が少ない土地らしく日本人にとっては夏休みシーズンなのでありがたい。しかし雨季はバガン名物の気球が飛ばないのでご注意を。