日の出とともに暖かい空気が鹿児島湾を包む朝、船は港に向けて速度を少し落として進む。小さい富士山のような形の山を過ぎるととうっすら桜島が顔を出す清々しい一日の始まり。
温暖な気候と類似してか、人々の温もり、思いやりが感じられる大好きな寄港地の一つ鹿児島市。いつも滞在時間以上に満足感、幸福感を得て帰船するその理由は船外で出会う人々が不思議なまでに優しいから。
●マリンポートかごしま
錦江湾に浮かぶ人工島で雄大な桜島を眼下に望める。立派な天然芝にランニングコース、ヘリポートまで併設する珍しいポートで2016年完成と新しく長崎同様かなり広めのキャパシティ。
前述したが、早起きして鹿児島湾に入っていく景色と風を是非堪能してほしい。すると山々に囲まれ守られているようにも見える市内が次第に大きく見えてくる。
錚々たる顔ぶれのクルーズ船が定期的にマリンポートかごしまに来航。
そこまでクルーズに興味がなくてもよくニュースを読む人なら分かる名前がちらほら…。
これだけの世界を代表するクルーズ会社の船が鹿児島へ寄港するのは中国からの利便もあるが、観光地としての高い評価、期待の表れだ。
着岸後、まず最初に目を引くのが色んな国旗を振って万遍の笑みで下船客を出迎えるピンクアフロのおじちゃん。警備員さんの中にも1名いつも同じ人がいて両者共こっちとしては勝手な顔見知り感覚。
下船していきなり、芝生でキャッチボールをしていた学生たちに飛び込み参加した自身初外出。
船が職場兼家などと言う謎多き人間でも彼らは快く仲間に入れただけでなく、さっき買ったばかりというNEWグラブまで貸してもらい何dか申し訳ない。筆者は左投げだが有り難く使わせて頂いた。天気が良ければターミナルでピクニックもできる、新しい。
そしてターミナルに欠かせないのがホットスナックの屋台。買うのはいつもたこ焼き。
あんまり半生が得意じゃないがここのはよく焼きで満足の食べ応え。
このお店を営む老夫婦を親のように慕う韓国人の同僚に紹介されて以来、寄港したらあいさつするように。その後QEに移籍したその同僚の動向や最近の出来事を報告すると嬉しそうに聞いてくれて最後に頑張りなとフランクをサービスしてくれるのだ。
彼らの優しさは一体どこから来るのだろう。
離岸時のペンライトを振っての見送りも毎回恒例、それも肉眼で見えなくなるくらいまで淡いネオンが暗闇に光ってゆれてるのを見るのはエモーショナルな体験。
この場を借りてポートの皆さんいつもありがとうございますとお礼を言いたい。
団体でのツアー、個人でのタクシーチャーターを除けばクルーには大きく2つの選択肢がある。
徒歩 海を挟む大橋を渡り市内へ
海にかかる橋を越え真っ直ぐ歩くこと10分。外国人クルーが入り浸る2強スポット。
①ドンキホーテ
言わずと知れた激安の殿堂。あんなものやこんなものも売っていて最悪何も買わなくても、日本語に囲まれた異空間にいるだけで旅行気分を味わえのだろう。気持ちは分かる。
また近辺には星乃珈琲、スシロー、GoGoカレーといった全国チェーンのレストランや大手スポーツショップの入った複合施設など充実したショッピングエリア。ラウンド1でボーリングするのも密かな夢。
②マンガ倉庫
広めのセカンドハンドショップらしいが普段外出しないクルーですらマンガ倉庫のために出るほどの熱烈なファンを持つ。スマホやゲームなどの電子機器は彼らの母国で買うより安く、品質も安心のJAPANブランド。ホビーやフィギュアなどアニメ好きのクルーも多く客船の寄港日は忙しくなりそう。ギター担いで帰ってくる人もいたりする。
徒歩圏内はかなり日常に近いスポットが多く、何か特別な鹿児島感が欲しいところ。
シャトルバス ドルフィンポート経由で市内中心部へ
90%筆者はこっち派。ヤシの木がペイントされたいわさき交通のバスに揺られること20分。初めての寄港地はこの間に、その日の行き先をGoogle MAPで検索。完全な自論だが★の平均値よりも★5の数とそのレビューを読んだ方が参考になる。
現在は商業施設の営業を終了してしまったドルフィンポートから徒歩5分、路面電車の線路手前を左へ。住宅を改装した喫茶店がある。
●珈琲なぎさ
ダークブラウンの家具と淡いベビーブルーの壁の色が印象的、メダカを眺めながら深煎りのブレンドをいただく。
ランチタイムのすり下ろしリンゴが入ったカレーの上品な甘さは苦いコーヒーとの相性抜群、締めのコーヒーゼリーにのるのは挽きたてコーヒーパウダーがかかったバニラアイス。コーヒー愛を感じる品々。家のようで家じゃない、でも頂くのは家庭的な手料理、ワンダーランド的空間。
旅行好きの女性オーナーが渡航先で買い付ける数量限定の小物や雑貨、普段使いも出来るアクセサリーは地元のマダムたちに人気。
●COFFEE INNOVATE
また違ったタイプのカフェが市役所の裏側にありここはコーヒー雑誌に掲載されていたお店。
メインの通りから一本入ると人通りも落ち着く。大きな窓から日差しも入るが明るすぎない店内。天井高い。
革のソファに深く腰をかけレコードから流れる音楽に耳を傾ける、、置いてある数冊の雑誌のチョイスも秀逸…あ〜ここの近くに住んで毎朝通えたらなんて妄想してたら隣から楽しそうな声が。隣のファッショナブルな異空間との間に境界線はなく出入り自由。最高じゃないか。
アメリカーノとホットサンドをオーダー。おかわりラテはテイクアウト用に、同じビルの向かいにはスケボーショップDUSKもあり長居確実。
カフェイン投入完了したらデパート山形屋を通って天文館通りへ。天気が多少崩れてもアーケードがあるので安心。
永田シロアリという駆除業者のビルはインパクトの塊。
だいたい100円ショップと2ndストリートをはしごしてから一角にあるザビエルの一生が描かれた天井画を見上げるのがお気に入り。
スペインに生まれフランスで神学を専攻したザビエル。
インド、東南アジアへの布教の旅は困難の連続だったそう。その途中マラッカで鹿児島出身の武士アンジローに出会ったのがきっかけで日本へ。鹿児島の人たちは温かく迎え入れてくれたと手紙に記している。
その頃から鹿児島の人たちは優しいのか…感慨深い。
少年期に戦争を体験し、宗教改革、大航海時代の全盛期に生きた波乱万丈な彼の人生は今後も日本史の一つのターンニングポイントとして語り継がれてゆく。
天文館は九州ラーメン激戦区。いろいろ食べ歩きいたのだけど、、
●こむらさき
一度食べたらこむらさきにハマってしまった。まさに病みつき、それ以来ここ一択(そうゆうとこある)長崎のちゃんぽんと同じく濃厚なので筆者は白飯必須。
1階はコの字型カウンター、2階はお座敷でグループにも対応。食券を買って待とう。
着丼!美しい盛り付け。豚骨鶏ガラの濃厚スープと具材を下からよくかき混ぜよう、この時の湯気の匂いが最高だ。
野菜とチャーシューをソーメンのように白い細麺に絡めて、、、たっぷりの茹でキャベツと椎茸がアクセント、付け合わせのタクアンでさっぱり口直ししてからニンニク追加でさらにG系へ味変。Sクルーズのご飯からするとこのラーメンは最高の御馳走。お腹一杯。
味の濃さ、ヘビーさは好みが分かれるテイストかもしれないが横浜のラーメンミュージアムに出店しているとか、おすすめです。
●城山記念公園展望台
天文館から歩いて20分、、照国神社を抜けると順路に合流。伸びた木の枝が額のようになり桜島をより引き立てる。はるか彼方に見える船は手前のビルより大きく見えたり?クルーであろうと目を疑う時がある。
天文館むじゃきと言われても何か分からないがが南国 白くまアイスの商標はみんな知ってる。
南国とは鹿児島のことだったのか、、納得。天文館の本店で食べれる白くまかき氷は泣ける美味しさ。他にも黒豚しゃぶしゃぶやさつま揚げなど有名どころは多くお酒もすすみそう。市内の充実したインフラも素晴らしい。
桜島へは水族館近くのフェリーターミナルから15分。噴火する姿も見る。灰色の噴煙が雲の高さまで上がりしばらく続く。島民は頻繁に避難訓練を行ってるとか…。サンダルで外出すると足に灰がつくので靴は履こう。
船内ツアーでは時間に限りはあるが仙巌園や指宿、霧島といった遠方へのオプションもある。クルーはお風呂がない(シャワーはあります)ので基本いつでも温泉に行きたい。
野球好きの筆者、鹿児島に一つ思い当たる節がありググってみたらヒットした場所。
番外編 烏帽子山 最福寺
小さい頃に買っていた某野球雑誌。
そこに載る苦悶の表情をした選手にバチバチ燃える火柱の写真。どうやらお経を唱えて精神力を鍛える修行で、護摩行というらしい。
キャンプ前のシーズンオフ、清原や金本、新井ら一部のプロ野球選手がそれをしにわざわざ鹿児島に毎年のように足を運ぶのだ。
そのお寺が鹿児島の平川と言う所にあり電車で行けそうなので行くことに。
思ってたのと違う外観。
堂内には国内最大級の木造仏、弁天財が鎮座する。火柱は立っていない(真夏)。
ここの法主である池口氏には半分都市伝説のような逸話や政界とのコネクション、さらには北朝鮮とも繋がりがあるとかないとか。地下には博物館顔負けの東洋美術コレクションがある。人気はなく薄暗いからまた不気味。壺、掛軸、菩薩像、刺繍。中国、西安の兵馬俑まで寄贈されており何者なんだと背筋が凍った…。
信じるか信じないかはあなた次第です。
無事に最福寺を後にし安堵。
帰路の無人駅で見つけた一枚のポスター、何といいキャッチだろう。
1863年、生麦事件が発端となり薩英戦争という鹿児島VSイギリスという現代では考えられないような戦いが起きる。そこで惨敗しイギリスの強さを知った西郷隆盛や大久保利通らは開国論へと舵を取り、幕府を倒すため長州藩と薩長同盟を結び大政奉還、明治維新を果たすのだ。
この一連の映画のような流れロマンだね。時を読み、考えを変え、プライドを捨てて戦って掴む成功は尊い。負けから学ぶことはたくさんあるはずだ。
2019年夏。マリンポートかごしまで長年クルーズ船出迎えの指揮を取る女性がDPのクルーズに来られた。
その船旅は確かお子さんからのプレゼントだったと記憶している。初の乗船、「いつも見送ってる船に乗るのは不思議な感覚だ」と率直な感想を述べられ、これまでの港での献身的なおもてなしを知った船長の計らいでサプライズで特別なパーティーに招待され、直接船長と話せて良かったと喜ばれていた覚えがある。
仕事中の短い会話だったが、彼女の高揚感に満ちた表情は今でも忘れられない。
現在コロナウイルスの影響で、休止に追い込まれている世界中のクルーズライン、寄港地として客船を受け入れる側の方々も安全に再開する日を待ちわびていたら嬉しい。
続く