桜も散った3月の終わり。
今年で28歳になる筆者の門出。
長いこと眠っていたパスポートと船員手帳を手にいよいよ出国の時。
地元からバスで向かった羽田空港国際ターミナル。
しかし1〜3のどのターミナルで降りれば調べるのを忘れていた。
このミスは国内外問わず何度もやっているのに、、学ばない…。
迷う事は時として楽しく、その過程で見つかる何かが結果的に面白かったりする。
だがターミナル間で迷うのはシンプルに時間の無駄。
ググった結果第3ターミナルと判明。
閑散としたターミナル内。
メールで添付されたチケットを無事にゲット。
●海外の空気感、トランジットのトルコ、イスタンブール空港
少ない乗客のほとんどがヨーロッパへの乗り継ぎだろう。
初めてのトルコ航空、中東系の美人CAさんはまるで広告。
出発直前の自販機で購入したストレートティーが驚くほど美味しくて。
機内は横3列貸切。
機内食付き、11時間半のフライト。
夜明け前、朝5時イスタンブール上空。
久々に目にする海外の光景を窓越し目に焼き付けた。
煌びやかな夜景の街並みとは対照的な闇夜に浮かぶ濃ゆい橙色の三日月。
真っ黒な海にまとまりなく浮かぶ夥しい数のタンカー、漁船。
艶やかで一際大きなモスクのサイズ感は出国の数日前に訪れた都内のジャーミー(モスク)とは比べ物にならないのだろう。
膨らむ妄想。
無数の街灯がアリの巣のように拡がる小道を照らす。
乗り継ぎのイスタンブール空港到着。
これは、デカい…。
驚きを隠せない空港のキャパシティ。
早朝にも関わらず見たことない数の便が分刻みで発着する。
同じトルコ航空、荷物そのまま。
トランジットは2時間でしっかり時間余ったのは成長。
自分へのご褒美にスタバへ。
品揃え豊富なサンドイッチ。
久しぶりに英語で注文、脳内で円換算出来ない通貨。
トルコはいつかゆっくり行きたい。
受け取ったカップの名前はkentel。
きっと発音のせいだなと反省。
さあ後はロンドンまで4時間、もう一眠りでもすればヨーロッパ。
しかし濃霧で遅れる出発。
機内でしばし待機。
するとアナウンスもなく周りが続々と離席するのでCAさんに質問。
どうやら一度は全員機内を出ないといけないらしい。
言って欲しいな。
●乗船目前、ヒースロー空港にて待ち受ける試練
満席のフライトを終えロンドン、ヒースロー空港に到着。
結果2時間以上遅れ。
パスポートチェックには長蛇の列。
よっぽど時間に追われているのかガンガン割り込む一部の人々。
早朝から苛つく大多数、とても不穏な雰囲気に包まれている。
有人と無人の二手に別れたイミグレーション。
日本のパスポートは幸い無人のマシンを通すだけだが肝心のマシンがなかなか気分屋な様子。
先行く人をどんどん弾いている…。
同い年くらいであろう日本人らしき男性は何度も試すが失敗、苛立ちながら有人の大行列へ。
その背中に漂う悲壮感と焦り。
いざマイターン…。
パスポートをかざす、しっかり弾かれもう一度の表示。
大丈夫、想定内だ。
確かに時間はかなり押しているが今は関係ない、もう一度。
願いが叶ったのは3度目。
改札を通過しこれで少しは遅れを取り戻せると思った矢先…。
羽田で預けた荷物がなぜか出てこない。
待つこと1時間半、これは初めてのパターン。
ラゲッジロストの電話番号もらっても電波ないし、電話借りようとしたら断られ。
今日乗船出来ないと次は2週間後。
他のレーンを探したら普通にあった!!何のアナウンスもなく変わるラゲッジレーン。
言って欲しいな。
どうやらヨーロッパの空港は現状、コロナでの減便や賃上げのストライキなど不安定な労働環境でかなりよろしくない状況にあるらしい。
海外の洗礼ではないが手元にあるだけマシと思おう。
出口にてSky Princess Crewのボードを掲げるポートエージェントの女性を無事発見。
サウザンプトンまでは高速で1時間半。
思ってたよりか近い。
知らない土地はやはりワクワクする。
殺風景な牧場を横目に筆者を含め3人。
追い越し車線をかっ飛ばすフォードのバン。
1人はイタリア人のギターリスト、もう1人はコロンビア人のウエイター。
そこまで盛り上がるネタがある訳でもなく、ありきたりな会話でその場をやり過ごすには少々長い道のり。
寝たふりでもかます。
サウザンプトンの看板で高速を降りる。
可愛らしい木造の一軒家が1列に立ち並び、市街地には学校やショッピングセンター、IKEAも出現。
ふとしたタイミングから話に加わっていた運転手のエージェント、唐突に指差す先にある墓地。
そこはなんとタイタニックの犠牲者が眠るとか…。
更に盛り上がりづらいトリビアを仕入れたとこでコンテナポートに到着。
リアルな英語を耳にするのは久しぶりとかの次元ではなく、聞き取れないブリティッシュイングリッシュの発音。
震えてきた。
いよいよ船の全貌が視界に映る。
あれ、これはけっこう大きいよな、バグるサイズ感。
330m、東京タワーとほぼ同じ。
ターミナルにはエンバケーション(乗船)を待つ長蛇の列、そしてそのほとんどがホワイトご老人。
野球で例えるならここはメジャー、クルーズのいわば本場でこれから彼らの写真を撮るのか。
その瞬間から仕事モードに切り替わる。
高鳴る胸に落ち着けと言い聞かせる意味で一服。
エンバケーションが2年ぶりだなんてまるで嘘のよう。
乗船前最後の検査をも陰性でパス。
いよいよ乗船、一歩一歩踏み締めるギャングウェイ(港から船にかかる渡り橋)。
船を目にした安堵の気分なのか、込み上げてくる興奮からか自然と笑みがこぼれた。
『Hello, Welcome aboard!』の声が近づいてくる。
笑顔で出迎えるフィリピン人セキュリティ。
お〜ジャパン!コンニチワ〜とってもフレンドリーで気さくなな彼らの一挙手一投足に当時のダイヤモンドプリンセスでの日常が蘇る。
2回目の帰ってきたんだ…。
クルーオフィスへ向かうクルーエレベーター(ブリティッシュイングリッシュではリフト)でフィリピン人マネージャーにピックアップされ無事チームに合流。
こうして羽田からの長旅を終えついに乗船の時を迎えた。
正直なところ前乗りからのロンドン1泊させてくれてもいいじゃない…。
待ち侘びた、未知との遭遇が続く半年間。
カリブ海シーズンを終えマイアミから大西洋を超えヨーロッパにやってきたスカイプリンセス。
アメリカ〜ヨーロッパの行き来は大手のクルーズ船では頻繁にあり特に珍しいことではない。
ゲスト2800人を迎え入れポルトガル、リスボンそしてスペイン、カナリア諸島へ出航。
海外から海外クルーズ、新たな冒険の始まり。