専門学校の夜間部に通いグラフィックデザイン科(名前だけ)を卒業した筆者は就活せずにフリーターを続けた
Adobeの基礎を学び広告系の会社に入れればと思いオーストラリアワーホリを一年で切り上げ夢と希望を持って入学したがデザイナー枠での就職はスキル的にも厳しく、当時していたバイトが自分に合ってたのも就活を辞めた理由の一つかもしれない。
学校の最寄駅である曙橋駅から校舎に行く道中にあるピンク色の酒屋の求人に目が止まった。配達1200円!当時は東京ドーム、地元のイタリアンの皿洗い、ショッピングモールのキッチンの3つをかけもちしながらやっていたが学校の宿題もあり疲れは明らか。
学校も近いしひとつに絞ろうと思い曙橋店に志望を出すもそんなに店が忙しくないのでダメ。
第二志望に乗換駅であった有楽町を選んだがここは原付経験がないといけない、、ダメ。
そして面接官から銀座はどう?と言われたらい回しになった私の職場はこうたらい回しのようにして決まった。
都内大手の酒屋チェーンの会社だがここ銀座は店舗型ではない。倉庫をJR有楽町と新橋の中間にあるコリドー街の高架下に借りそこを拠点に配達するシステムだ。
注文は全てコールセンターからで本当に多種多様なお酒、ドリンクを取り揃えている。棚整理している時の時間でさえ、お酒のラベルやロゴのデザインは専門の宿題のインスピレーションにも役立った。いっしょに働く人たちも変わり者が多く楽しかったのを覚えているし何より時給がいい。
まず住所の見方を覚え地図の見方を覚え、そして最短の道順をイメージし走って体で覚える。交通ルールを遵守しつつ一方通行だらけの銀座で事故なく運転するのは容易ではない。
一言で銀座と総称しても大きく半分に分けられる。ブティックや老舗デパートが並ぶ一般的な銀座のイメージは1〜4丁目で昼側、晴海通りを挟んで5丁目〜8丁目が夜側で特に7、8丁目の新橋に寄ればよるほど夜の色が濃くなってくる。そここそが私たちのメインエリアだ。
狭いエリアに密集してたつ雑居ビル。割烹、お寿司、天ぷらを代表とする飲食店からオフィス、バー、ママさんのいるクラブを中心に、また東銀座の歌舞伎座や新橋演舞場、日比谷公園の音楽フェス、霞ヶ関のお役所などエリア内どこでも注文が来たらピンクの台車をつけた電動自転車をこいで配達するのが仕事。だいたいのお店は回収までする。
鯛2匹いるレアヱビス。
マジックバーの回収物にはマジックの形跡。
皮肉かもしれないが回収の仕方にその店の品位が垣間見えると思う。支払いの都合上、ビールやコーラなどリターナブル瓶というリサイクルできる容器を数えなくてはいけない店もあり汚いところは普通のゴミも混じってたりすると言葉にならない嫌悪感が生まれる。
自然とお酒の銘柄にも強くなる。名前は分かるけど味は分からないのがほとんどだが…銀座のいいところは出るお酒がウイスキーやシャンパンのように単価が高いところ。重さと値段は全く比例しないのでビールも樽より瓶が多い。
塩や冷凍食品、傘などの注文にも対応、どんなオーダーであれ我々に在庫があれば届けることが可能。
たまにある試供品提供と嬉しい限りです。
ふだんは忙しい時はもちろん忙しいけど、暇な時間帯もしっかりありオンオフの切り替えは自分でつけれる。配達に行った延長でコンビニに行くこともしばしば。ただ繁忙期、特に年末の忙しさは完全にクレイジーで忘年会用の缶ビールケースが飛ぶように消えていく。
そしてこのバイトの素晴らしいところがまとめて休めるのだ。当時の店長にはよく無理を聞いてもらい1週間、長くて3週間の連休を3ヶ月に1度いれてもらいバックパッカーをしていた。でも次第に自覚したのは自分がただの旅行好きなフリーターということ。
別にそれでもいいのだが何かフリーターという響きがどうも頭に引っかかり取れなかった。何か新しいことをすることで変わらなくてはと思ったが今まで通り旅行は続けたかったためどうしたらいいかグーグルに答えを探したところ見慣れない単語がヒットした。
クルーズ…これだと思わずにはいられなかった。