前回は乗船クルーがどんな環境で生活をしているか紹介するとともに、生活費がかからない点を客船で働くメリットの一つとしてあげた。
今回はさらにまた違った角度から筆者が思うメリットを考察しながら中国4都市の回想編。
マニラ、基隆(台湾)を拠点に宮古島、石垣島、香港へ行く東シナ海クルーズが終わった4ヶ月目。契約期間を折り返す時点で仕事とは別に船乗りがとても楽しくなっていた。
●毎日違う場所にいける
これがどれだけ素晴らしいことか…。
もともとなぜ客船で働こうと思ったかというと単純に旅行が好きだから。
やはり仕事より旅行の方が楽しいのだ。でも仕事をしないと生けてけないのでもし旅行を仕事にしたらどうなるのか…その考えの延長でこの環境を選んでる自分の選択ゆえ何があっても後悔はない。
上海→天津(北京)→大連→青島
SSVは中国本土にマーケットを移しこの4ヶ所がホームポートになり順に1ヶ月ずつで向かうのは同じ九州、5泊6日のショートクルーズだ。
毎日、毎晩、海を進み続け寄港地を挟みながらグルグルするのがクルーズというもの。翌年までどこに行くか日程が決まっているので乗船してる限り、船の行くところに自分も行く。
同じ中国とはいえ広大で各港で乗船してくるゲストの人間性がかなり異なるのも興味深かった。取り分け上海の客層はクルーズの常連が大多数でリッチ。
それとは全く別なのが大連や青島のゲストでほぼ全員が初のクルーズ旅行。身なりも仕草も違い、レストランでも本当に楽しそうにしているのが感じ取れて素直に嬉しかった。
QUANTUM OF THE SEAS
生まれて初めてみたロイヤルカリビアン社の船の大きさには度肝を抜かれ、これがワールドクラスかと。
上海のポートは超大型クルーズ船3隻が縦列停泊可能なほどのキャパシティ…。MSC,ロイヤルカリビアン,うちの順番でちょうどレストランから見える船のスケールには言葉を失った。
タクシー以外街に出る方法はなくかなり制限が厳しいので中国人クルーと一緒じゃないと不安すぎる。
初寄港はいつものショアリーブの数倍新鮮に感じるし、ワクワクの塊ななで発見も多い。
一眼カメラ(Nikon d5300)を持ち歩くのがマイルール。
町の至る所に中国式社会主義の片鱗が見てとれる。
筆者が想像していた中国のイメージは近代化したハイテク産業、いわば上海、浦東の高層ビルや外灘といった極一部の煌びやかなパート。
でも実像はかなり違った。
何もない更地に新たに都市を1から作っている印象でそれもまたひとつの魅力であり刺激的。道もどんどん整備されていて広い。
でもそれは逆に考えればまだ伸び代があるということ。
新旧様々なドイツ車が多いのが意外でタクシーまでもVW...減税対象なのだろうか。
大人たちが昼間からトランプしてたり、道端でドローン飛ばしてたりと目の行き場に忙しい。
超市…絶対的にスーパーマーケットだと思ったらコンビニ?!漢字からの和訳は100%ではないのだ。
謎の毛皮売りを横目に韓国料理へ。大連はかなり北朝鮮に近いからか、韓国料理屋さんが多く感じる。同行した韓国人も納得のお味、決してアイドルがいるわけではなく価格帯も含め、新大久保とは話が違う。
国を超えて毎日違うところにいる。
パスポートもいらない…クルーにとっては当たり前だが改めて考えるとすごいこと。仕事して寝て起きて遊びに行って給料をもらい生活費も交通費もかからない旅行を8ヶ月間…。
銀座で配達バイトをしていた理由も同じところにずっといれないマグロのようなマインドからだったことを思えば自分のやっていることに愛着が持てるのも納得。
香港編に続く。