傘の出番が増えた5月下旬。ついにマイホームタウンの緊急事態宣言も解除され街に人気が戻りつつあるが、全体的な閉塞感はそうすぐには拭えない。
みなマスク姿で俯き気味に歩き、目に見えない恐怖に怯える嘆かわしい現実。
先日PCを修理しに、上野に足を運んだがあまりの静けさに驚いた。人気のないアメ横、飲食業の厳しい実態は閉まったシャッターの多さが物語る。銀座も閑散としていて浅草もまた同じ。
元気のないTOKYOだがロックダウンせずに終息に近づけたのは嬉ししいこと。一連の流れは海外からの評価も高く、生活様式や日本食に関する検索数が急上昇しているとか…ピンチの後にチャンスが来て欲しいものだ。
●THE肉体労働
そんな厳しい世の中の巣ごもり需要、自炊、買いだめカルチャーを背景に、某スーパーマーケットの物流センターでの派遣業務が始まった。
2ヶ月半に渡るニートライフからいきなり週5の夜勤を入れてみたり。コンベアから流れてくる食品、生活雑貨の段ボールをパレットに積み替える作業は自我を忘れるほどの物量=忙しさで足を止めてる時間が少ない分、あまり眠くならないのがせめてもの救い。
色んな業者が次々往来し毎日早朝に店舗へ出荷される。
普段何気なく利用するスーパーの裏側、生産者と消費者を繋ぐパイプラインとして24/7止まることなく稼働する物流業界。
どれだけ技術革新したとしても今自分たちがしている作業は今後も変わらない気がした。
●映画ライフ
昼夜逆転の生活になり、人に会う予定も特にない毎日。実世界では起きないであろうファンタジーを与えてくれる映画はお一人様の時間を満たし狂った睡眠時間軸を紛らわしてくれる。
Netflixもいいが実際観るのは数本で、海外ドラマにどハマるタイプでもないのでAmazonプライムビデオくらいのコンテンツ量が個人的にはちょうどいい。最近観たものを5本+いくつか紹介したい。
①ゆれる人魚
ホラー、ラブロマンスさらにミュージカル要素を取り入れたポーランド映画。80年代のワルシャワのストリップクラブが舞台で人魚の姉妹の妖艶さを引き立てながら人間への禁断の恋を描く。
水に強いしずる感と映像美は必見だが相当心に余裕があるときに観ないとしんどいのだけは先に言っておく。
船で働いていた時、ラボのマネージャーがポーランド人だったのだが、ごつい体格にスキンヘッド、ヒゲモジャでタテューの彼がもしこの映画に出ていても全く違和感ないなとふと思ったり…。
②あと1センチの恋
映画かよ!と数えきれないほどつっこみたくなるラブロマンス。タイミングが合わなくても、例え好きな相手が結婚したとしても、その時々で頑張っていればやがて結ばれるかもしれないと勇気づけられる。
ポジティブマインドは大切。リリーコリンズは目の保養になるのはおそらく間違いないが純愛系とは言えないラブストーリーに響くか響かないかはあなた次第。
③フランシス・ハ
ダンサー志望のフランシスのNYでの奮闘記、そして彼女のルームメイトでもあるベストフレンドとの生活がリズム良く描かれる。
茶目っ気たっぷりのフランシスは日本語でいう天然、気取らずにいつもありのままの姿でストリートを走るシーンは観てるだけで元気が出る。
物語が進むに連れうまくいかず衝突するシーンも増えるが、ふと元気づけ助けてくれるのは友人だったり友人の友人だったり、実家で待つ親だったり。
美しきモノクロ。見えないはずの色がリアルすぎる質感とカメラワークで見えてくるかのようで自然と画面から目が離せなくなり最後の終わり方まで美しい。
④Paterson
バスドライバー、パターソンの1週間の記録。平凡で愛おしく生活感に溢れる日々の切り取り方がとても優しい。
多くは語らず、感じたことを詩におさめるそこに喜びを見出している。
仕事が終われば日課の犬の散歩、その帰りにバーでビールを一杯。帰宅しディナーの席、ベットでパートナーと他愛のない会話をして眠りにつく。
これぞクオリティライフなのか、、、他にはない世界観。
⑤Her
スマホを持たない日々を送るパターソンとは対照的にスマホ依存に近い日々を送るのがHerの主人公セオドア。
正直なところ、なかなかブログの題材になるような話題が身の周りになく困っていたがこの映画を改めて観たら色々な展開が思い浮かび考えさせられる内容だった。
ストーリーはスマホの音声アシスタントに恋に落ちる男性の話と説明されればそれまでだが、素敵な脚本によって人間の本質的な誰かを求める欲求、感情、人工知能の魅力、両者の根本的な違いを深く掘り下げている。
もしAIが独自に進化を遂げ、持つはずのない感情を示し向こうから語りかけてくるようになったら…しかも向こうは自分の情報を全て知っており、有能で、気が利き肌身離せない存在だとすると好感を持つのは自然な流れか。
離婚を切り出されるも踏ん切りがつかない状態で別居暮らしが続くセオドアの手元にやってきた最高な話し相手サマンサ、彼女の声は徐々に閉ざしていたセオドアの心を解放し彼の表情は明るくなってゆくのだが…。
手紙の代筆ライターという興味深い仕事の主人公の中年男性、セオドアを演じるホアキン・フェニックス、後に彼こそが数年後に大減量をして大ヒットしたあのJOKER役を演じる。
話は戻り、Herの魅力とも言えるAIサマンサの声はスカーレット・ヨハンソン。
元妻役にルーニー・マーラ(ドラゴンタトューの女のキャラが好きなのだが話が複雑になるのでしない)。ちなみに現実世界ではホアキン・フェニックスのリアルワイフ!?
近未来のロサンゼルスという設定に疑問を持たなかったが久しぶりに見返すと作中の高層ビル群にどこか見覚えが。
調べたら案の定、上海の浦東ががロケ地ではないか!
一度見たら忘れることのできない摩天楼の眺め、見上げすぎて首が痛くなる角度。
文字通り住む次元が違い、実態もない存在から現代人はどれだけの恩恵を受けてるだろうか、AIとの共存化社会は目前なのかもしれない。
音声AI映画で一際キャッチーで親しみやすい映画がJEXI。
コメディ要素満載のこちらは音声アシスタント機能のJEXIが全く持ち主の言うことを聞かないという…逆転した従来の位置関係、しかしAIが消極的な主人公フィルを強引に行動させ成長させていく。速めの展開で音楽(One Republic/Connection)に合った心地良いテンポの良さ。フィルの憎めないキャラクターも好きだ。
●上海の景色
Herつながりで去年行った上海の写真も載せておく。船で何度か行ったことはあるものの中心部からポートがとても遠いため何も出来なかったのが悔しく昨年プライベートで4日滞在。
日が暮れるとともに人の波が南京東路の歩行者天国から延々と続き川沿いに放出される。
黄浦河沿い、上海を代表する観光地の浦東エリアの高層ビル群と西洋建築が軒を揃える外灘エリアとが相対する。
密、密、ここは蜜じゃない、そういったワードが自ずと頭をよぎりながら今後旅するのかと思うと胸苦しい。
1842年、アヘン戦争後のイギリスと締結された南京条約によって開港された上海、もとは小さな漁港だったというがにわかに信じがたい。租界地(中国の法律が効かない外国人移住区)として外灘エリアは開拓されていった。
欧米諸国が次々に銀行や商社を設立し交易を開始。東アジア圏の金融の中心地とし繁栄した西洋建築の跡は今日まで残り上海が誇る人気観光地に。
条約自体は中国側にとって当時不利な条件だったが結果的には良かったのかもしれない。
%でおなじみ京都の% ARAVICAも外灘に店を構える。ロースターも併設しておりトレンドに敏感な富裕層、インフルエンサーに人気のよう。
中国四千年の歴史を2時間で堪能できる上海博物館。
ひとりっ子政策も終わり子供が多い館内、宿泊していたバックパッカーで同室になった地方からの高校生旅行者はここに来るのを楽しみにしていたそう。共に朝食をとり現地まで一緒に行くも気合入りすぎて開館待ち。しかしすでに長蛇の列が…なぜ。
8月の気温と同じくらい彼の熱い思いに温度差を感じ入り口で現地解散、こういうところは思い思いに自分のペースで周るのが1番。
結局彼は丸一日ここで満喫したそう。良かったね。
龍美術館 (西岸館)
2014年にオープンした上海のアートコレクターの私設ミュージアムは是非また訪れたい。その独特な外観、広い敷地、展示の規模の大きさどれをとっても一見の価値あり。
チケットは現地購入、現地価格では比較的割高だが納得のボリューム。現代美術中心に企画展が2つ同時開催されていた。
白を基調とし自然光が入る明るい印象の上層から分かりにくい地下への細道を辿ると上層の海外さながらの明るいオープンなアートと対照的な社会主義感に溢れる地下の常設店につながる。
ナショナリズムを象徴する赤い壁面に戦争色が色濃く残る国内の成長が描かれた絵画。国営ならまだしもこの意図的なコントラストもまたアートなのかと勘繰ってしまう。
外灘がある黄浦河を南下したところに位置し、出来て新しいスケートパークやアディダスのランニングベースもあるが、空き地もまだ多く今後の発展が楽しみ。
泥で濁った水の色は長江と海が混じる上海クルーズターミナルで見覚えがありどこか懐かしい。
パンタグラフがついた電車のようなバス、仕組みも乗り方も分からず…。乗り放題パスを買い無双状態の地下鉄と徒歩でスターバックスのコーヒーワンダーランドへ。
無音の電気スクーターはノーヘルでいいらしく40キロほどしか出ないがけっこう欲しい。
ラグジュアリーなハイソエリアを抜けてしまえばローカルな脱力系日常が広がる。
治安がいい現れなのか、または全く他人に干渉されない社会なのか…思い思いに過ごす彼らを目にし力が抜けた。
世界的に勉強しなくても中国語の漢字を見てなんとなく意味が感じ取れるのは日本人だけだろう。
パワースポットとして有名な玉佛寺では写経体験ができるそう。曜日が合わなかったがいつかやってみたい。
中国の人口は13億…上海の人口は2400万人といわれ東京と埼玉の総人口よりも多い。
いずれにせよピンとこない数字、そして総人口の35%が60歳以上の高齢者といわれ日本と同じくらい高齢化社会。違うのは国土と子供の数か…。
シェアビジネスが活発な国内市場においてシェア自転車は飽和状態。
アプリさえ取ればオンラインで使えて便利なのだろうけど…VPNという裏技を使わないとインターネットにすら接続できない観光客には高めのハードル。
タバコが尋常じゃない値段で喫煙者だらけ。一通り市場で食材を見た後の食事ははっきり言って気乗りせず、ファミマの不味い麻婆カツ弁当ががとどめを刺した。
一か八か気になっていたハラルフード認定のローカルレストランに勇気を出して入ったのが大正解。
美味しい…海外で邪念や疑念を持たず満腹になるまで食べれる喜びは計り知れず。
野菜たくさん入ってて量も十分で200円ちょい、、驚愕のコスパ。ハラル系なのでアルコール類の販売はなく店員の歩き始めくらいの赤ちゃんがまた可愛い。
色々どハマりしてしまい結果、毎食通う。最後の食事を終えるとなんだか感傷的になってしまった。
言わずと知れた多民族国家の中国、この店の人たちも男性は筒状の帽子を被り、女性は髪の毛を隠したりと独自の風習を守っていてた。
一等独裁の共産党による言論統制や民族、領土問題といった外から見た厳しいイメージとはかなり異なり平和な光景が多かったというのが総括。薄気味悪いほど暗い夜の旧市街でも危ないシーンはなかった。
全世界で流行しているコロナウイルスによって先行きの不透明化に拍車がかかっている現状でその中心に中国があるのも事実だが、政治的な偏見抜きにひとつの旅先として見る中国は新旧が混ざり合い色んな意味でおもしろいと思う。
後書き
観たい映画のリストアップは日課になっており、新しいのも観たいが好きな映画を何度も観るのも好き。よってリストだけが増え続ける。
批評を読み他者の目線も参考に観るのもおもしろいし、今回のHerのように久しぶりに観ると見方が変わっていたりする作品こそ映画の醍醐味かもしれない。
実際に映画の舞台となっている世界へいつか行ける日を楽しみにステイホームしながら待とうではないか。
後半写真多めでごめんなさい…。読んでくださりありがとうございました。